マイナンバーカードに健康保険証機能が搭載された「マイナ保険証」が普及する中、「お薬手帳は不要になるの?」と考える方も多いでしょう。
しかし現段階では、マイナ保険証だけで完全に代替できるわけではありません。
本記事では、マイナ保険証で確認できる薬剤情報の範囲やその限界、そしてお薬手帳を併用すべき理由を、専門家の見解や公式情報とともにわかりやすく解説します。
1. マイナ保険証とは何か?メリットの概要
マイナンバーカードを健康保険証として使える仕組み「マイナ保険証」では、顔認証や暗証番号による本人確認の上で、診療情報や過去の薬剤情報、特定健診の結果などを医師や薬剤師が確認できます。
これにより、受付・窓口でのスムーズな対応や、高額療養費制度の適用など、利便性や安全性が向上しています。
2. お薬手帳とどう違うのか?
比較項目 | マイナ保険証(マイナポータル) | 紙または電子のお薬手帳 |
---|---|---|
登録情報 | 医療機関・薬局からの処方・調剤情報(直近1か月〜最大5年分) | 自分又は医療機関が記録 |
対応品目 | 処方医薬品(OTC含まれず) | 処方薬・OTC・サプリ・副作用歴など |
更新タイミング | 医療機関受付時に反映(タイムラグあり) | 手書きやアプリですぐ更新可能 |
長期保存 | 最大5年分、一部に限定される | 保存期限なし、自由に記録可能 |
自由記入欄 | なし | 副作用、アレルギー、体調変化も記録可能 |
スマホ対応 | マイナポータル連携で閲覧可能 | 多くの電子お薬手帳アプリあり |
✅参考記事
厚生労働省公式ホームページ
3. マイナ保険証だけでは不十分な3つの理由
① 対応できない薬や情報がある
マイナポータル上で確認できるのは、処方・調剤された医療用医薬品に限られます。市販薬(OTC)やサプリメントなどは含まれず、自己管理が難しい状況のままです。
② 厳密な更新や即時反映に限界がある
受付時認証後に情報共有されるため、直近のお薬情報がすぐ反映されないケースもあります。よって、最新の服薬状況を確実に伝えたい場合はお薬手帳が有効です。
③ 自由記入で補える個人情報の重要性
副作用経験やアレルギー、体調の変化などを記録できるのはお薬手帳の強みです。これを把握していれば、医療提供側がより安全・適切な処置を行いやすくなります。
✅参考記事
厚生労働省公式ホームページ
4. なぜ「お薬手帳はまだ重要」なのか?

マイナ保険証の普及により「もうお薬手帳はいらないのでは?」と考える人が増えています。
しかし、現場で実際に患者を支える医師や薬剤師の多くは「現状ではお薬手帳は依然として重要」と指摘しています。その背景には、以下のような具体的な課題と現場の経験則があります。
4-1. 薬剤師の視点:「情報の粒度と即時性が違う」
薬剤師は調剤時に、マイナ保険証で処方履歴を確認できますが、その内容は「処方された薬剤名・分量・日付」などに限定されます。
一方で、お薬手帳には以下のような情報を手書きや電子入力で補えるため、薬剤師の安全確認に直結します。
ある薬局の薬剤師は次のように述べています。
「マイナ保険証で見られる情報は確かに便利ですが、それだけでは患者さんの生活実態を反映できません。例えば“市販の風邪薬をよく飲んでいる”といった情報はお薬手帳でしか確認できないことが多いのです。」
4-2. 医師の視点:「診断・治療に影響する副作用歴の把握」
医師にとっても、薬歴確認は診断・治療の重要な判断材料です。マイナ保険証の情報は一定期間で自動的に削除される(原則5年)仕組みのため、長期的な副作用歴やアレルギー歴を確認するには不十分です。
大学病院の医師は次のように指摘しています。
「患者さんの中には、10年前に薬で重篤な副作用を経験した人もいます。しかし、その記録はマイナポータルでは確認できません。紙や電子のお薬手帳に残っていれば、重大なリスクを回避できるのです。」
4-3. 患者の視点:「災害時・急病時に役立つ安心感」
災害時や旅行中、急な体調不良で初めての病院にかかる場合、マイナ保険証を使えないケース(停電・通信障害・対応未整備の医療機関など)がまだ存在します。
このような状況では、紙のお薬手帳を持参していればすぐに情報を共有できるため、患者や家族にとって大きな安心材料になります。
実際に災害医療に携わった医師からは、
「震災時には電子的なシステムが止まりました。お薬手帳を持ってきていた人は適切な処方ができましたが、持っていなかった人は一から問診をしなければならず、リスクが高まりました。」
という声も上がっています。
4-4. 専門家の共通見解:「両輪で使うことがベスト」
薬剤師会や医師会も共通して「マイナ保険証とお薬手帳は補完関係にある」との立場を示しています。
- マイナ保険証:客観的な処方履歴を迅速に共有できる
- お薬手帳:生活に根差した実態や長期的な履歴を柔軟に残せる
つまり「どちらか一方ではなく、両方を併用することが安全な医療につながる」というのが現場の総意です。
✅ まとめ
マイナ保険証は医療のデジタル化を推進する有効なツールですが、まだ「万能」ではありません。特に薬剤師・医師・患者の視点から見ると、お薬手帳が持つ「即時性・柔軟性・長期保存性」は欠かせない補完機能です。現場の声を踏まえると、現時点では「マイナ保険証+お薬手帳の両方を持ち歩く」ことが安心・安全の最適解といえます。
5. いつかお薬手帳が不要になるのか?将来展望と注意点
今後、医療DXによって電子カルテの共有範囲が広がれば、マイナ保険証のみでもかなりの情報を網羅できるようになる可能性があります。すでに2025年から全国一部地域でモデル事業が始まっており、将来的にはお薬手帳と統合された形も考えられます。
とはいえ、現時点でお薬手帳が不要になる時期は未定であり、不安にならずに、当面は「併用」が最善策です。
6. まとめ:安心・安全に医療を受けるための最適な選択は?
現在(2025年8月時点)、マイナ保険証だけではお薬手帳に完全に代替できません。以下の理由から、併用が最も安全・安心な選択です。
- 処方履歴(1ヶ月〜最大5年分)はマイナ保険証で幅広く共有可能。
- しかし、OTCや副作用履歴などの情報は含まれず、お薬手帳で補完する必要があります。
- 医療現場も併用の重要性を強調しており、今後の制度拡充にも時間を要する見込みです。
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